最近になってメジャーな存在となってきたのが「音声」によるチャット、つまり「ヴォイスチャット」やWebカメラなどを用いて音声と映像によってコミュニケーションをとる「ビデオチャット」です。それらは従来の「チャット」とは全然違う取り組みです。どちらかといえば「電話」に近い形です。「電話」は専用の電話回線でのやり取りになります。それが有線であれ無線であれ、リアルタイムであり、テキストでのチャットのようにログをとるなどということはあまりないでしょう。
従来のテキストのチャットは同じ「ログ」を複数人で参照することで成り立っていました。ですが、近年見られるヴォイスチャットやビデオチャットは「ストリーミング」です。電話のようにリアルタイムです。たとえば音声通話を可能にする「スカイプ」などにも「テキスト」の情報はあるものなのですが、そのテキストはメールのように「送信」されたものであり、リアルタイムです。使い勝手は従来のチャットと変わりがないように見えるそれらメッセージサービスのチャットシステムですが、原理はかなり変わっているのです。それは私たちが従来のチャットに馴れているからということもありますが、誰でも誰とでもコミュニケーションがとれる従来のチャットとは少し違ったものになっています。
まず、それらのシステムはアプリケーションを介したものであることが多いでしょう。これまでのようにチャットサイトなどにアクセスしてコミュニケーションをとるのではなく、共通のアプリケーションをインストールし、そのアプリケーションの回線、サーバーを利用して互いにつながるのです。これは相手をある程度知らなければ実現できないことであり、「誰とでも」というわけにはいきません。また、そのやりとりはインターネット上に公開されるものではなく、クローズドなものです。
インターネットはある程度「誰でも何でも」という次元を超えたようです。その反動で、今度はより「個人と個人」の関係を強固にするようなサービスが増えています。「実名登録」が前提のフェイスブックでもそうです。また携帯電話などのアドレス帳を判別する「LINE」などもそうです。個人と個人がどのようにして便利に繋がれるかということを重視したサービスが主流になってきました。これまでの「匿名でのコミュニケーション」から、実際に見知った人とオンラインでも繋がるという方向へとシフトしてきたのです。ヴォイスチャットやビデオチャットもその流れの中にあります。
インターネットに誠実さを求めるためには、やはり「匿名」ではいけないのかもしれません。実際に見知った間柄であれば、「騙り」などということも生まれないのかもしれません。リアルに知っている人たちと共通して郷味がある話題を共有したり、面白いニュース、サイトなどを共有したりする時代です。フェイスブックの「実名登録」が、インターネットを新しい次元に導いたのかもしれません。リアルの中に自然にインターネットの技術が浸透してきています。私たちはそれを使いこなせるようになっています。テキストチャットで行われていたコミュニケーションは、今ではリアルな繋がりとして発展しているのです。
|